『桜の代紋』(1973年、三隅研次監督)を観た。
検問の警察官が射殺された。広域暴力団西神会の犯行とにらんだ刑事・奥村(若山富三郎)は、知り合いのやくざ(大木実)に捜査協力を依頼するが、それが暴力団の抗争のきっかけとなり、さらには警察内部に西神会の内通者がいることが判明する。果たして奥村は事件の真相にたどり着けるのか・・・?
犯罪者には厳しいが、身内には優しい激情家で人情家の刑事を若山富三郎が熱演。静かに怒りの炎を燃やして復讐の鬼となるシーンには凄味があった。
それから警官射殺犯を演じた石橋蓮司が若山富三郎に柔道の乱取りで締め上げられるシーンは、「気の毒。」としか言いようがなかった。かつて若山富三郎は現場に遅刻して来て無反省なアイドル歌手を送襟絞で絞め落とした逸話を持つ武闘派。若山の技を受けきった蓮司のジョバー(プロレス用語で負け役)ぶりに乾杯。
他の出演者は警察側に内田朝雄、江幡高志、小林昭二。奥村が追う西神会の面々は大滝秀治、渡辺文雄、草野大悟、大前均。チョイ役で加藤嘉と、"おじいさんの詰め合わせ"状態。大滝秀治の狡猾で憎たらしい演技は絶品だった。
日本映画低迷期に「これでもか」と言わんばかりに負の連鎖が起きる映画も珍しい。これだけのテンションとアクションで展開する日本映画があった事に驚く。
何とも埋もれてしまうのが惜しい再評価を願う作品だ。
若山富三郎は海外に紹介する際の日本を代表する俳優として歴代5本の指に間違いなく入ると常々思ってます。海外の人にも文句なく伝わりやすいアクションと表情。そして『桜の代紋』『子連れ狼』〜『ブラック・レイン』へ至る、なんか体表から鱗粉が出てるんじゃないかというオーラ。ヤバい人です。
— 出町座 (@demachiza) October 30, 2019