映画美貌録

映画はミューズで出来ている。

『邪願霊』。

 U-NEXTで石井てるよし監督のオリジナルビデオ映画『邪願霊』(1988年)を観た。      

 アイドル・加藤恵美(佐藤恵美)のプロモーション撮影中、宣材写真に不気味な霊のようなものが映り込んだり、突然照明が落ちてくるなど不可解な事故が連続する。テレビ局の取材班(竹中直人)は真相究明に乗り出すが、カメラに映ったのは恐ろしい亡霊の姿だった…。

 元祖『放送禁止』。

 構成の小中千昭氏の著書で本作の存在を知り視聴してみたら面白かった。フェイクドキュメンタリーの教科書の様だった。ドラマ『夏・体験物語』でおなじみの佐藤恵美の密着ルポと思いきや、雲行きが徐々に怪しくなる過程が見事。憎いね、こんちくしょう。

 表紙に竹中直人が大写しになっているが、ちょいちょい写り込むぐらいで程よい存在感が良かった。本人も楽しんで芝居をしていた。

 それからリポーターの女が大活躍。佐藤恵美の危機を救ったり霊に説教したりと、「お前、何者やねん」と、思った。

 本編終了後のサービスカットは水野晴郎の解説と竹中直人のネタ。最後の最後まで制作陣の遊び心があって楽しかった。現在と違ってバブル絶頂期だから金もかかっていた。

 令和の時代に昭和の最後に始まった日本のフェイクドキュメンタリーを堪能した。